2021年08月05日

2021 Aug 4

決算発表続く。今回はアマゾン
7月30日のQ2決算発表で8%も下げたアマゾン株。

Q2の結果は前年同期比売上27%増、EPSは46%増と全く問題なしだが売上の期待値をミスったため株価が下げた。売上増が良くても株価が下がるのは発表前の株価には売上増期待値が織り込まれているためだ。

投資家としてビジネスを分析する際これは非常にトリッキーで分析すべきあくまで事業であり他人の意見との差ではないという点だ。

他人の意見は大切。しかしあくまで事業を分析し自分で自分の意見を作ること。その上で他人の意見を聞くべきだ。

アマゾンのビジネスを分析
まずはアマゾンのビジネスを前四半期だけではなく全般的に見てみる。

アマゾンの売上は商品売上とサービス売上に分かれる。
商品売上の太宗は小売りの売上でこれが最大。
サービス売上はAWSの売上、次に3rd party小売りの手数料、primeメンバーシップが太宗だ。

サービス売上のうちAWSの営業利益率が30%超と高く営業利益の59%をAWSが稼いでいる。また、3rd party seller feeの利益率も高いと考えられる。

一方小売業の利益率は低い
小売業売上では、仕入れ価格と共にshippingコストが大きく小売りで儲けるのは難しい。データを使って在庫回転を上げたり粗利を上げるなど伸びしろはあるものの小売りだけではそんなに儲からないのだ。

実際アマゾンの小売部門(北米)の営業利益率は 3.7%とウォルマートの 4.0%と大差ない。つまり小売りだけではアマゾンの利益成長には限界があるということだ。

アマゾンは顧客experienceの改善とプロセスの効率化に金を使いまくっている

利益は後回しで競争ポジションを固めることにリソースを使っているため資本効率は利益で見ても実態はわからず売上成長でみるべきだ。
つまりやろうとしていること(顧客の獲得と売上拡大)が上手くできているかで経営力を計るべきだとしたらこの上なく上手く経営していると言える。

戦略が正しいかどうかは別問題だが。これは今すぐには答えはわからないものの経営力はハンパないと言える。この経営力を使って既存ビジネスの強化に使うとか、新たなビジネスを展開するとか、データを競争ポジションの強化に使うとかして最終的には利益を上げていくわけだ。

理想的な "Compounding machine"
売上金を社内に再投資するサイクルがうまく行きまくっており勢いは止まらない。これが成功しており理想的な compounding machine(複利状態)状態になっている。
つまり顧客から得た金を社内に再投資しそれがさらに売上を増やす好循環だ。

よく「内部留保」というがこれは利益を社内に留保するという意味だがこの概念だけではアマゾンの経営力を把握しきれない。つまり今利益が出なくてもよく、売上金をやりたいこと(戦略の実行)に使いそれが上手くいっている。

バリュエーションは?
アマゾンの経営を見ていて考えさせられるのは「バリュエーション」とはまずビジネスが付加価値を生み出していることが大前提だということ。これは数字の分析に入る前に考えるべきことだ。

これは顧客価値のみならず従業員が楽しく働くなどお金 $で計りにくい部分も大きいことも投資家として知っておくべきだ。

サプライヤーなどに提供する価値なども含まれる。こうした価値創造という抽象度の高い概念をCEOがどのように考えているのかも企業価値算定の一部だと思う。

なぜならこれがないと結局は資本コストというところで引っかかってしまい株主価値を生み出せなくなるからだ。
つまり他社と比較しての相対価値が付加価値であり相対評価なのだ。相対的に優れていないとダメということ。

この相対の基準がファイナンスでは資本コストとして表現することしかできないため付加価値が生み出せない企業は結局資本コストを超えられず株主価値を失うメカニズムとなる。

具体的なバリュエーションについて入っていくと、そもそも e-commerce 小売業界の成長率は13-14%と高い。アマゾンはこの市場の1/3を占めている。
今は成長率高いがいずれは6-7%の成長率に収れんするだろう。しかしそれには10年くらいはかかるだろう。
従って現在の余裕で二けたのEPS成長は数年は続くものの永久には続かない。これをバリュエーションに織り込む。

海外はまだまだ成長余地あることと世界のインターネット普及率は現在まだ64%とまだ伸びる余地あり(USは90%) 数年は小売部門の急成長は続くだろう。
ここでは長期の持続可能EPS成長15%を仮定する。

AWSなどの小売以外が利益率が高いがこの部分のバリュエーションははっきり言ってわからない。10年後に何がアマゾンの稼ぎ頭になっているか?はっきり言ってわからない。従ってアマゾンへの投資はリスキーな投資と言える。

では投資家は何に賭けているのか?それはアマゾンの経営力となる。リスクが大きくわからない部分が大きいもののバリュエーションではリスキーな部分は資本コスト或いは成長力とリスクのミックスであるMultiple に織り込むしかない。

ハクゴの分析では長期の持続可能利益成長を15%とし、現在の株価 $3,353 で投資した場合の長期の期待リターンは 9%-12%程度と推定する。

ただリスクが大きいということはこれが上にも下にもブレ得るということだ。
リスクを勘案してもまあまあのリターンで現在の株価はそんなにとんでもなく高過ぎるわけではないということは言える。

アマゾンのような企業に投資する投資家とっては正直わからないことだらけで判断が難しい。これを判断するのが投資家の仕事だ。

「パス」でも良い。つまり「わからないことが大きいので手を出さない」というのは投資家が持っている有効な選択肢だ。これは時に最も賢い選択肢となることも知っておこう。

結論:アマゾンの現在の株価は高過ぎではない

 ハクゴ録「アマゾンの株価は高過ぎないがわからないなら手を出さないと言うのも賢い選択肢」

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