2022年06月22日

2022.6.11-2

世界最高の投資家から投資を学ぼう企画。1977年からのバフェットから「株主への手紙」を読破する。
バフェットを「読む」は毎年バークシャー・ハサウェイ社の年次報告書で発表されるバフェットの「株主への手紙」原文を読みその中で最重要と思われる2,3点を抜き出して解説する。
バフェットは投資とビジネスの様々な局面でどう考え、どう動くのか?これらを学ぶことで投資家としてレベルアップしていきたい。
抜粋部分には書かれていないバックグラウンドなども紹介してより立体的にバフェットの考え方を理解できるように解説したい。
多くの人が投資家として成長すればビジネスは賢くなり、より豊かな社会につながるだろう。

目指すは賢明なる投資家!

1983年バークシャーの保有株は以下の通り
銘柄MKT value
($mil)
割合
Affiliated Publications, Inc.26.62.0%
General Foods, Inc.228.717.5%
GEICO Corp.398.230.5%
Handy & Harman42.23.2%
Interpublic Group of Companies, Inc.33.12.5%
Media General, Inc.11.20.9%
Ogilvy & Mather International, Inc.12.81.0%
R. J. Reynolds Industries341.326.1%
Time, Inc.56.94.4%
The Washington Post Company Class B136.910.5%
All others18.01.4%
Total1305.9100.0%

それでは1983年の内容に入っていきたい。

企業業績の見方について
"We never take the one-year figure very seriously.  Instead, we recommend not less than a five-year test as a rough yardstick of economic performance. Red lights should start flashing if the five-year average annual gain falls much below the return on equity earned over the period by American industry in aggregate"

「我々は一年の業績をあまり気にしていない。少なくとも5年の業績を業績の実態を評価するツールとすべきだ。5年のROEがアメリカ企業全体の平均と比較して劣っている場合には red flagだ」

【解説】
短期の業績ではあまり言えることが少ないため業績は長期で見ることが大切ということ。これは繰り返し言われていることだが具体的にバフェットは5年以上を見ているとのことだ。そしてアメリカの企業平均と比較する。
一年間の業績が悪化しても即ダメというわけではない。しかしそれが終わりの始まりである場合もあるわけで判断を見誤る可能性はあり難しいところだ。
1年の業績すら短期過ぎると。最低5年だと。ましてや短期の株価なんて。。。
バフェットが良く見ている業績指標はROEとともに "return on net tangible asset" と呼ばれるもの。そしてどちらも借入が過度にないことを条件としている。 net tangible assetとは 運転資本(売掛金 + 在庫 - 買掛金)+ 設備 のことでこの net tangible assetを増加させずに利益を増加させることは難しい。利益増を如何に少ない資本増加で実現できるかがグレートビジネスとしてのクオリティの一つのカギとなる。

企業の簿価と本質的価値の関係
"Book value tells you what has been put in; intrinsic business value estimates what can be taken out."

「簿価とは使われたお金を示す。企業の本質的価値は投資された資本から何が生まれるかを推定すること」

【解説】
Book value(簿価、会計上の価値)と Intrinsic value(本質的価値)はどのような関係にあるのか?簿価は会計上のバランスシート上の資本の部の数値だ。これは企業の本質的価値を表していないのか?
Book valueとは過去に投資された自己資本の総額を示す。Intrinsic valueはその投資から将来生まれるキャッシュフローの現在価値だ。従ってイコールではない。原因と結果の関係にある。BVが原因でIVが結果だ。inputとoutputと言っても良いかもしれない。
バフェットは例えて「BVは払った学費でIVはその人がどれだけ稼ぐかみたいなものだ」と言っている。Inputが同じでも結果は大きく変わるもの。重要なのはこの関係だ。どれだけ投資すると(BV) どれだけの価値を生むのか(IV) という関係が良いものが価値が高い企業となる。$1突っ込むと$1.5の価値になる企業があるとしたらその企業の IV はBVの1.5倍と言えるだろう。このように投資額と価値の関係でバフェットはバリュエーションを考えている。バリュエーションを考えるときは利益と利益の成長率で考えてしまいがちだがここは考え方が大きく違うところだ。

経済的暖簾 Economic Goodwillについて
"My own thinking has changed drastically from 35 years ago when I was taught to favor tangible assets and to shun businesses whose value depended largely upon economic Goodwill.  This bias caused me to make many important business mistakes of omission, although relatively few of commission.     Keynes identified my problem: “The difficulty lies not in the new ideas but in escaping from the old ones.” My escape was long delayed, in part because most of what I had been taught by the same teacher had been (and continues to be) so extraordinarily valuable."

「経済的暖簾に価値を依存する企業を避け有形資産を持つ企業を選ぶべきという35年前の教えから自分の考え方はずいぶん変わった。このバイアスがあったため多くの投資機会を見逃してきた。ケインズの言葉;新しい考えを受け入れることが難しいのではなく古い考えから脱却することが難しいのだと。私は古い考えから脱却するのに非常に時間がかかった。その理由は同じ教師(ベンジャミン・グレアムのこと)から教わった他の教えがあまりにも貴重なものだったからだ」

【解説】
バフェットの師ベンジャミン・グレアムは企業の「質」よりも財務諸表に表れる「数字」を重視した。つまり定性分析より定量分析を重視した。これがベンジャミン・グレアムの分析方法の一つの特長だった。この理由としてはグレアムは1929年の大暴落で不確かな資産をもとにバリュエーションが高くなっていた株で大きく損したことがあるがそれ以外にも彼は元々株式アナリストではなくクレジットアナリストだったことがあるのではとハクゴは推測している。クレジット分析の本質はカバレッジにある。そして負債は資本に比べはるかに期間が短いため短期的に現金化されるもので負債がカバーされるかに注目するため時間と共に増大する無形価値の分析はしない、信じないというところから来るのではとハクゴは思う。彼の大著「証券分析」も債券分析から始まる。株式はその次の扱いになっている。

数字重視の分析方法を若いころ教わったバフェットはその教えを忠実に守ることで数字には表れないが価値のある企業への投資を避けてきたのだ。それによって機会を逸してしまったことが何度もあった。つまり質がいくら良くても簿価のx倍以上は払わないと考えていた。
バフェットはグレアムから多くを学んだがこの質より数字に固執した分析方法に疑問を抱いたのは現Vice Chairmanのチャーリー・マンガーだった。バフェットはマンガーと出会うことでその投資手法を質へ傾倒していくことになる。これについては バフェットを「読む」【第4回 コーヒーブレイク】 でも紹介しているのでご参照。
ここで言う「質」とは競争優位性のことだ。競争優位性が高いビジネスは投資した資本以上の価値を生み出すことができる。それが経済的暖簾がある状態といえる。
バフェットはこれをSee's Candyへの投資から学んだ。See's Candyへの投資はバフェットを大きく成長させた。おそらくバフェットはSee’sへの投資を人生で一番の投資だと考えていると思う。

ハクゴ録「数字から質へ分析のフォーカスが変わっていった

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