2022年06月24日

2022.6.11-2

世界最高の投資家から投資を学ぼう企画。1977年からのバフェットから「株主への手紙」を読破する。
バフェットを「読む」は毎年バークシャー・ハサウェイ社の年次報告書で発表されるバフェットの「株主への手紙」原文を読みその中で最重要と思われる2,3点を抜き出して解説する。
バフェットは投資とビジネスの様々な局面でどう考え、どう動くのか?これらを学ぶことで投資家としてレベルアップしていきたい
抜粋部分には書かれていないバックグラウンドなども紹介してより立体的にバフェットの考え方を理解できるように解説したい。
多くの人が投資家として成長すればビジネスは賢くなり、より豊かな社会につながるだろう。

目指すは賢明なる投資家!

1984年バークシャーの保有株は以下の通り

銘柄MKT value
($mil)
割合
Affiliated Publications, Inc.32.92.6%
American Broadcasting Companies, Inc.46.73.7%
Exxon Corporation175.313.8%
General Foods, Inc.226.117.8%
GEICO Corp.397.331.3%
Handy & Harman38.73.0%
Interpublic Group of Companies, Inc.28.12.2%
Northwest Industries27.22.1%
Time, Inc.109.28.6%
The Washington Post Company Class B150.011.8%
All others37.32.9%
Total1268.9100.0%

それでは1984年の内容に入っていきたい。

内部留保について
"we believe there is only one valid reason for retention.  Unrestricted earnings should be retained only when there is a reasonable prospect - backed preferably by historical evidence or, when appropriate, by a thoughtful analysis of the future - that for every dollar retained by the corporation, at least one dollar of market value will be created for owners"

「制限のない (unrestricted) 利益を留保する理由は一つしかない。留保された$1が少なくとも$1の市場価値を生み出されるということがしっかりとした過去のエビデンス或いは深い考察に基づいた将来分析に裏付けられた妥当な見通しがある場合のみだ。」

【解説】
まず「制限のない利益」について。利益には "restricted" 部分と "unrestricted" の部分がある。企業が一年間に稼いだ利益の一部は現状維持するだけのために再投資必要な部分がある。現状の生産高を維持したり競争上の現在のポジションを維持するために利益の一部を使わないといけない場合だ。この利益部分を配当してしまったら生産高や競争ポジションを維持できなくなる。
この利益部分をバフェットは配当できないという意味で"restricted" portionと呼んでいる。言い方を変えるとMaintenance CAPEXが減価償却を超える部分が restricted portionとなる。maintenance CAPEXが減価償却の範囲内に収まるなら配当を100%払って且つmaintenance CAPEXも払えるからだ。restricted portionが大きくなると再投資の投資効率が既存よりも高くないとROEがいずれ減少していくため不利だと言える。

ちなみに1984年のバークシャーにはないが現在のバークシャーには maintenance CAPEXが減価償却を大幅に超える子会社が2社ある。それは Berkshire Hathaway Energy(発電事業)とBNSF(鉄道事業) だ。この2社は大量の設備投資を必要とするため配当を出せない。しかし2社に特殊なのは規制で守られていて競争が制限されていることだ。規制は政府の意思次第なため政府との関係を長期に渡って慎重に保つ必要がある。この2社の利益はバークシャーの最大の利益を生み出している。ここはバークシャーの一つの大きなリスクと言える。バフェットは有権者に配慮してこれら2社が他社比で非常に安い料金で顧客にサービスを提供できていることを毎年の手紙の中で強調している。

話戻ると利益の restricted portionは留保せざるを得ないが unrestricted portionを留保するためにはそれなりの経済性が確認されないとすべきではないと言うことだ。バフェットがこの留保利益について語る時想定している一番の例はシーズキャンディー (See's) だと思う。シーズキャンディー社は高い資本利益率を誇る代表的子会社だ。カリフォルニア州で大きなプレゼンスがあるのだが他州への進出は失敗している。これはブランド価値が他州ではイマイチなため。このため高いROE でバークシャーの中でも最優等生であるにもかかわらず利益のほとんどを配当しているのだ。これは利益留保によって追加的に投資された資本、つまり他州への新店舗が利益を生み出さないため留保はダメということになっている。
世の中の企業ではこの内部留保の分析をあまりせずに単純に配当性向だけ決めて内部留保している企業が多くそのような企業内で留保された利益は価値が毀損されていることになる。

内部留保からキャピタルアロケーションへの話
"the CEO of a multi-divisional company will instruct Subsidiary A, whose earnings on incremental capital may be expected to average 5%, to distribute all available earnings in order that they may be invested in Subsidiary B, whose earnings on incremental capital are expected to be 15%"

「子会社を複数持つ企業のCEOは内部留保による追加投資リターンが5%の子会社Aから利益をリターンが15%B社に社内でシフトすることができる」

【解説】
これは初めの説明から自明だが社内で利益をより高いROEの子会社で使うという事が可能だ。シーズキャンディーの利益を他の子会社或いは公開株式への投資に使っている。この内部留保については過去ずっと再三再四バフェットは説明をしておりバフェット投資哲学の最重要概念であることに疑いはない。そしてキャピタルアロケーションが上手くできるかできないかで長期的な価値創造に大きな差が出るということだ。

ハクゴ録「内部留保利益をどう使うかが重要

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(06:22)

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