2022年06月25日

2022.6.11-2

世界最高の投資家から投資を学ぼう企画。1977年からのバフェットから「株主への手紙」を読破する。
バフェットを「読む」は毎年バークシャー・ハサウェイ社の年次報告書で発表されるバフェットの「株主への手紙」原文を読みその中で最重要と思われる2,3点を抜き出して解説する。
バフェットは投資とビジネスの様々な局面でどう考え、どう動くのか?これらを学ぶことで投資家としてレベルアップしていきたい
抜粋部分には書かれていないバックグラウンドなども紹介してより立体的にバフェットの考え方を理解できるように解説したい。
多くの人が投資家として成長すればビジネスは賢くなり、より豊かな社会につながるだろう。

目指すは賢明なる投資家!

1985年バークシャーの保有株は以下の通り

銘柄MKT value
($mil)
割合
Affiliated Publications, Inc.55.74.6%
American Broadcasting Companies, Inc.109.09.1%
Beatrice Companies, Inc.108.19.0%
GEICO Corp.596.049.7%
Handy & Harman43.73.6%
Time, Inc.52.74.4%
The Washington Post Company Class B205.217.1%
All others28.02.3%
Total1198.3100.0%

それでは1985年の内容に入っていきたい。

1985年の株主への手紙は特に内容が濃いと思った。盛り込み切れないが重要な概念がたくさん説明されている。

繊維事業の閉鎖について
"We remained in the business for reasons that I stated in the 1978 annual report (1), ... (4)the business should average modest cash returns relative to investment..... It turned out that I was very wrong about (4). "

「繊維事業を閉鎖しない理由を過去に上げたが4つ目のポイントすなわち初期投資に対してまずまずのキャッシュフローを生み出している場合は閉鎖しない、について自分の判断は大きく間違っていた」

【解説】
この年1985年繊維事業を閉鎖した。そして自分の過ちをここで認めている。
バフェットは1965年にバークシャーを買収したが海外からの競争が入ってきて業績はずっと良くなかった。バークシャーを買収したのは間違いだったのでは?自分の過ちにうすうす気が付きつつも20年間繊維事業を閉鎖できなかった。そして1985年についに繊維事業を閉鎖した。これはバフェットにとって歴史的な年で終戦の年とも言えるのではないか。繊維事業の閉鎖は象徴的な出来事だったに違いない。
この失敗により数字より質を求めていく投資哲学にシフトしていく。過去のお荷物をきれいにしバフェットはここからさらに飛躍していく。

なぜ自分の間違いを認めることができなかったのか?

"I ignored Comte’s advice - “the intellect should be the servant of the heart, but not its slave” - and believed what I preferred to believe."

「私は次のオーギュスト・コントの助言を無視してしまった ”知性とは心の奉仕者であるべきであるが奴隷となってはいけない” 私は自分が信じたいものを信じてしまったのだ。」

【解説】
この前の続きで繊維事業は業績が良くならず20年間苦しんだ。「繊維事業はきっとうまくいく」と信じていたのだがこれは客観的にはそう判断できかわけではなく自分がそう思いたいからそう信じていたのだ。ポジショントークのことだ。
繊維事業はコモディティビジネスであり多額の設備投資(restricted earning) を強いられるビジネスだった。新規機械の導入によって多少変動費を下げることは可能だったが国内外の競合も同じことをやってくるため差別化は出来なかった。
第6回で紹介した「有能と評判の経営者が経済性の低いと評判の事業に取り組むと生き残るのは事業の評判となる」という格言がここでも紹介されている。経済性の低い事業とは繊維事業のことだ。そもそも20年間苦労することになったきっかけは35歳の時にカッとなってバークシャーを買収したことに始まる。これについては第4回の「コーヒーブレイク」で紹介しているのでご参照。

インフレ下でも躍進したグレートビジネス
"The dramatic growth in earning power of these three businesses, accompanied by their need for only minor amounts of capital, illustrates very well the power of economic goodwill during an inflationary period (a phenomenon explained in detail in the 1983 annual report)." 

「追加投資の必要性が低いことと共にearning powerを大きく強めたこれら3社はインフレ下で経済的のれんの持つ力がどれほどすごいかを物語っている。」

【解説】
繊維事業と対照的に業績が素晴らしかった Nebraska Furniture Mart, See's Candy, Buffalo Evening Newsの3社についてのコメント。利益は大きく増加したがその間追加資本は少なかった。この優れた経済性はインフレ下で際立つことになる。インフレにより追加資本のコストが上がるため単位利益を増やすための追加投資が多い競合他社は株主価値を生み出すことが難しくなる。この3社は追加投資が少ないことが非常に有利に働いた。またこれら3社はその競争優位により価格決定力が高くインフレ下で求められるより高いROEを実現することができたため株主価値が大きく上昇したわけだ。これについては第10回で詳しく内容を紹介している。

インフレの企業価値への影響」で紹介したがインフレ下では4つの要因で株主価値が減少する。1)通貨購買力の低下、2)リスクフリーレート(国債イールド)の上昇 、3)コスト増による利益減少、4)資本投資のコストが上がる。この3点目を補うのが価格決定力だ。3社はこの価格決定力によりインフレ下でも価値を増加させることができたのだ。
繊維事業を閉鎖した1985年。真逆のスーパースター3社はバフェットの個人的な感情もありより際立って優良に見えたと想像できる。

ハクゴ録「繊維事業を閉鎖しバークシャーは新しい時代に

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