2022年06月28日

2022.6.11-2

世界最高の投資家から投資を学ぼう企画。1977年からのバフェットから「株主への手紙」を読破する。
バフェットを「読む」は毎年バークシャー・ハサウェイ社の年次報告書で発表されるバフェットの「株主への手紙」原文を読みその中で最重要と思われる2,3点を抜き出して解説する。
バフェットは投資とビジネスの様々な局面でどう考え、どう動くのか?これらを学ぶことで投資家としてレベルアップしていきたい。
抜粋部分には書かれていないバックグラウンドなども紹介してより立体的にバフェットの考え方を理解できるように解説したい。
多くの人が投資家として成長すればビジネスは賢くなり、より豊かな社会につながるだろう。

目指すは賢明なる投資家!

1986年バークシャーの保有株は以下の通り
銘柄MKT value
($mil)
割合
Capital Cities/ABC, Inc.801.742.8%
GEICO Corp.674.736.0%
Handy & Harman47.02.5%
Lear Siegler, Inc.44.62.4%
The Washington Post Company Class B269.514.4%
All others36.51.9%
Total1874.0100.0%

それでは1986年の内容に入っていきたい。

子会社経営について
"Charlie Munger, our Vice Chairman, and I really have only two jobs.  One is to attract and keep outstanding managers to run our various operations. ....
They were managerial stars long before they knew us, and our main contribution has been to not get in their way."

「チャーリー・マンガーと私の仕事とは2つしかない。一つは子会社の優れた経営者に適切なインセンティブを与えなるべく長く経営してもらうこと。彼らはバークシャーの一員となる前から経営のスーパースターでありチャーリーと私の助けなど必要としない。チャーリーと私が彼らにしてあげられることは彼らの邪魔をしないことだ。」

【解説】
投資家の仕事とは優れた経営者を雇い彼らの邪魔をしないということだ(もう一つはバフェットが常に言っているのはここでは出てこないがキャピタルアロケーション)。投資家というのは自分が企業の所有者なのであれやこれやと経営に指示を出したがるものだ。指示が必要な場合もあるが無理やり現状のやり方を変えようとしても上手くいかない場合が多い。もともと優れた企業を買っていればなおさらだ。投資家よりも経営者の方がよっぽどそのビジネスのことをわかっているわけでしかも上手くいっているなら投資家が立ち入ることは失敗を招くことが多い。優れた経営者には口出しせず自由にやらせるのが一番なのだ。

子会社経営について
"When you have able managers of high character running businesses about which they are passionate, you can have a dozen or more reporting to you and still have time for an afternoon nap.  Conversely, if you have even one person reporting to you who is deceitful, inept or uninterested, you will find yourself with more than you can handle."

「経営者に能力と情熱があれば子会社を1ダース持っていてもまだ午後には昼寝する時間さえある。反対に経営者が報告について不正直であったり能力に欠けていたり会社の将来に無関心であったりする場合にはたった一社でも手いっぱいだろう。」

【解説】 
業績が悪かったりオペレーションでのトラブルなどは誰でも報告したくないものだ。できれば隠したいという気持ちにさえなる。
経営者はたいてい頭の良い人ばかりで、もしここで言う正直さ、誠実さに欠ける場合は大変なことになる。
経営上マズいことが起こっても自分の非にならないように報告するとか、会計ルールに反しない範囲で数字変えるとか、報告義務でない事象にしてしまうとかさまざまなアクロバティックなことをやってのけてヤバい実態を隠そうとする。特に大企業病の会社になるとこうしたアクロバットを行うためにCEOはその部下として優秀な頭脳を大量に身の回りに置き、監査法人、税務アドバイザーなどと連携して四六時中工作をしている。
こうなると投資家は企業の実態がわからなくなり報告内容のウソを見抜くために多くの時間を費やすことになる。雇われている優秀な頭脳を持つ部下たちは実態を見抜こうと厳しい目で見ようとしている投資家を欺くために日々活動しているため、つまり相手の裏をかくことをフルタイムの本業として日々シャカリキに働いているため実態を見抜くことは極めて難しい。こんな企業が子会社にいるといくら時間をかけても実態把握をすることはできないということだ。逆に正直で誠実な経営者であればそのようなことに時間を割くことはない。実態を報告してくれるからだ。従って何十社持っていても一人でマネジできるというわけだ。
ここでは雇われ経営者を想定して話しているがオーナー経営者の場合は話が違う。経営者がオーナーであれば隠すもクソもない。全ては自分に降りかかってくるわけだから隠したってしょうがなくマズイことがあれば直さないといけないわけで重要なことなら良いことも悪いこともすべて知りたいと思うはずだ。オーナー精神をもって経営し報告してほしいということをバフェットは子会社経営者に常に語っている。これは投資の成功の一つの大きなカギでありこれのために様々な工夫をバフェットはしている。

オーナー収益について
"owner earnings." These represent (a) reported earnings plus (b) depreciation, depletion, amortization, and certain other non-cash charges ... less ( c) the average annual amount of capitalized expenditures for plant and equipment, etc. that the business requires to fully maintain its long-term competitive position and its unit volume."

「オーナー収益とは (a)会計上の当期利益 + (b)減価償却、除却費、アモチ、およびnon-cashの費用 - (c)平均的に必要なCAPEX. この平均的に必要なCAPEXとはもしそれを使わなかったら長期の競争優位ポジションに影響が出るとか或いは生産量が維持できなくなってしまうような設備投資額を指す。 」

【解説】 
「オーナー収益」という概念が出てくる。これはバフェットが考えた概念でたびたび出てくるのでここで整理しておきたい。
バフェットがこの新しい概念を持ち出す主な理由は会計上の税引前当期純利益は投資家が自由に他の投資機会にアロケートできる金を必ずしも表していない、ということから来る。

バフェットは当時Buffalow News, Nebraska Furniture Mart, See’s Candies, Wescoなどから上がる利益を投資に回して成長していた。しかし利益を全部合計した金額をすべて投資に回せるというわけではないということがわかった。

この理由は最低限必要なmaintenance CAPEXが減価償却を上回る場合もあるためだ。そこで考案されたのが「オーナー収益」だった。

オーナー収益=
Net income
+ 減価償却、アモチコスト、non cashの費用
- maintenance CAPEX

これにより実際バフェットが他の投資機会に回せる利益がわかる。

また、そもそもこの「株主への手紙」の主目的はバークシャーという企業の本質的価値を推定するのに十分な情報を株主に与えることとバフェットは言っている。
会計利益と実態利益が乖離している部分がありオーナー収益という概念でそのギャップを埋め実態的な価値の推定できるという面もある。

子会社財務諸表上には買収時に払ったプレミアムによってGoodwillと無形固定資産がバランスシートに載る。これら無形資産は毎年償却をする(1984年段階ではgoodwill も米国GAAP上償却を求められていた)ためPLが下がってしまう。GAAPに従うとどんな企業でも一様に償却費・アモチコスト計上を求められるため利益が下がる。しかし価値が下がらない場合も多くあるのだ。特にバークシャーの子会社については買収後、買収時の想定よりも利益を上げている子会社が多くありこのような子会社の場合償却費を計上すると実態から乖離してしまうとバフェットは言っている。
ルール通りにみると子会社の経済実態を正確に表していないので会計上の利益をそのまま見るのではなく修正を入れたオーナー収益が実態をより正確に表しているというわけだ。

減価償却とmaintenance CAPEXについては第11回「内部留保について」で詳細説明を紹介しているので詳しくはこちらをご参照。またmaintenance CAPEXは推定が特に難しいとバフェットは言っている。これは競争力が落ちるギリギリ手前まで少なくした設備投資額となり実際に計ることは出来ないからだ。
実態を伝えるためにオーナー収益という概念を作り詳しく説明してくれている。逆に言うとGAAPには欠点がかなりあるということだ。子会社の価値が下がった時などは暖簾の減損は行っているが価値が上がった場合 goodwillが増加することはないためこの非対称性に問題があるとバフェットは言っている。ビジネスというものは複雑で一つの会計ルール(GAAP)で多くの企業実態を捉えられるものではないとバフェットは考えており投資家は会計数値をそのまま使うのではなく内容を理解したうえで実態に近いものに修正して使うべきだと主張している。

バフェットは会計ルールの限界をよく指摘しており企業バリュエーション上留意すべき点をいくつか挙げている。アモチコストはそのうちの一つとなる。もう一つよく出てくるのはストックオプション会計。バフェットは長年ストックオプション会計の変更を主張して議会まで動き一部ルール変更があったものもある。

ハクゴ録「企業の実態を捉えるために会計数値に修正を加える必要がある

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(05:41)

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