2022年08月11日

2022.6.11-2

世界最高の投資家から投資を学ぼう企画。1977年からのバフェットから「株主への手紙」を読破する。
バフェットを「読む」は毎年バークシャー・ハサウェイ社の年次報告書で発表されるバフェットの「株主への手紙」原文を読みその年の内容の中で最重要と思われる2,3点を抜き出して解説する。
バフェットは投資とビジネスの様々な局面でどう考え、どう動くのか?これを読み解いていけば巨人の肩に乗り投資家として今よりもずっと遠くが見えるようになるだろう。そしていつか自分の足で立ちバフェットの視座から世界が見えるようになることを目指す。
抜粋部分には書かれていないバックグラウンドなども紹介してより立体的にバフェットの考え方を理解できるように解説したい。
賢人の教えを学びより多くの人とここで理解をシェアしたいと思う。多くの人が投資家としてより良い判断ができるようになればビジネスは賢くなり、より豊かな社会につながるだろう。

目指すは賢明なる投資家!

2012年バークシャーの保有株は以下の通り。
銘柄MKT value
($mil)
割合
American Express Company8,7159.9%
The Coca-Cola Company14,50016.5%
Conoco Phillips1,3991.6%
DIRECTV1,1541.3%
IBM13,04814.9%
Moody’s Corporation1,4301.6%
Munich Re3,5994.1%
Phillips 661,0971.3%
POSCO1,2951.5%
The Procter & Gamble Company3,5634.1%
Sanofi2,4382.8%
Tesco plc2,2682.6%
U.S. Bancorp2,4932.8%
Wal-Mart Stores, Inc.3,7414.3%
Wells Fargo & Company15,59217.8%
Others11,33012.9%
Total87,662100.0%

それでは2012年の内容に入っていきたい。

長期的に下がっていくバークシャーのアルファ
"Charlie and I believe the gain in Berkshire’s intrinsic value will over time likely surpass the S&P returns by a small margin."

「チャーリーと私はバークシャーの本質的価値の上昇は長期ではS&P500を若干上回るレベルになると考えている。」

【解説】
バークシャーのパフォーマンスは過去長い間S&P500を超えている。具体的には過去57年間でアルファが年間9.6%となっている。このアルファは年々縮小してきている。これがS&P500を若干上回るレベルになると言う理由はバークシャーのサイズがデカすぎるためだ。サイズが大きいと全体の価値の絶対値を上げるためには大きな金額を投資する必要がある。非常に高い成長率を上げる企業を探し当てたとしてもその規模が小さかったらバークシャー全体の価値を押し上げるには限界がある。そこでバフェットは常に大物 "Elephant" を探していると言っている。しかし elephantはなかなか見つからないものだ。そもそも数が少ないのに加え割安で放置されるという事はまずないので今までのようにS&P500を大幅に上回るパフォーマンスは難しくなる。

しかしバフェットは1980年代から同じことを心配していた。「もう規模が大き過ぎるので長期的に今までのような成長率を続けるのは難しい」と。この長期的というのがどのくらいを言っているかによるが市場の暴落は今後も10年に一回程度はくるだろうしElephantが現れるかもしれないし暴落時は自社株買いもできるのでしばらくはS&P500を十分超え続けるだろう。少しずつこのアルファは少なくなっていくのは悲しいものがあるがそれでも若干でも上回る限り投資する価値は十分あるだろう。

キャピタルアロケーション
今回の手紙では「配当」と題してキャピタルアロケーションの総まとめが載っている。

企業が生み出した利益をどう使うべきか?

この命題に答えるのがキャピタルアロケーションでありバフェットはバークシャー全体のキャピタルアロケーションを行っている。バフェットの仕事は大きく二つある。一つが経営者を選ぶこと。もう一つがキャピタルアロケーションだ。このバフェットの主務であるキャピタルアロケーションがどうあるべきかバフェットの考えがここでまとめられている。

①内部留保。利益再投資
企業が生み出した利益の第一の使い道は子会社での内部投資機会だ。事業の拡大や企業の競争優位性を表す「堀」を広げることに留保利益を使ってほしいとバフェットは子会社経営者に強くお願いしている。掘を広げることとは競争優位性を強めることだ。そして競争優位性を強めることイコール価値の増加と言える。自らのコントロールによって価値を生み出す過程がこの内部留保でありこの選択肢が最も重要と考えている。

ちなみに投資で出てくる「価値」とはいつも相対的なものだ。あるもの(Aと呼ぼう)に価値があるとは別の何か(B)と比較して価値があると言う。Bを機会コストと言う。Aを買った場合にその金でBを買うことはできないためそう呼ばれている。「競争優位」とは競合のBに相当する存在に対して相対的にAが強いということであり比較優位があって初めて価値がある。バフェットが「競争優位性を強めることに全力投球してくれ」と子会社経営者に強くお願いしているのは競争優位性イコール価値の創造だからだ。これができなくなった企業はいずれはできる企業にとって代わられる。それが資本主義の原理だ。だからこそこの内部留保がキャピタルアロケーションの No.1となる。

価値の創造とは顧客がその企業の商品・サービスを選択するということによって生まれる。従って商品・サービスの改良・拡大、地域的拡大、ブランド価値を高めること、事業の効率性を高めて価格を下げることなど顧客がその企業の商品・サービスを他社比魅力的だと思うようになるためにリソース(留保利益)を使うことになる。しかし留保利益を湯水のようにジャンジャン使ってよいわけでない。ここで重要なのが「第11回1984年」の2つのトピックで出てきた内容で内部留保の$1が市場価値$1以上を生み出す時にのみ内部留保すべきという点だ。もしそれができないのであれば留保利益は毀損されるため内部留保はベストの選択肢ではなくなり次の②以降の選択肢を探ることになる。

②買収
二つ目の利益の使い道は買収 (acquisition) だ。ここでの注意点は買収が一株当たりのベースで既存株主を豊かにすることが重要と言っている。これの意味していることは配当や自社株買いよりも良い選択肢である(つまりリターンが高い)ということと共に新規発行による買収をする場合は一株当たりの価値を希薄化させることに注意すべきという意味合いが込められている。この手紙上では「我々は過去に買収で多くの失敗をしたが。。」と書かれている。この買収失敗例の筆頭が「第8回1982年」の3つ目のトピックで出てきた Dexter Shoes社であり株式新規発行で買収し失敗した苦い経験についてここでは書かれていないが含意されていると思う。この失敗は過去の一回の失敗で終わらない。バークシャーの一株本質的価値が上昇すればするほどこのDexterという過去の失敗の大きさが膨らんでいくからだ。だからバフェットは買収の成功失敗を語る時必ず "wealthier on a per-share basis" と言っている。

ここは①とも深く関連していて①がちゃんとできている場合②の選択肢のうち新規発行する買収の価値は下がる。なぜなら買収のために新規株式発行をするということは①により価値を高めた子会社の一部を新しい株主に渡してしまうということに他ならないからだ。なぜ少なくとも自分の子会社よりはよく理解していない新規の企業と交換に努力して価値を高めた子会社の一部を手放さなければいけないのか?普通に考えて努力が水の泡だ。なんのために価値を高めたのかわからない。
①ができない場合長期ではビジネスの質はおそらく横ばいか下がる可能性が高い。そうなると②を選択することになるが新規でビジネスを買っても①ができないのだからいずれはそのビジネスの質も横ばいか下がっていく可能性が高い。結局①ができないと未来は明るくないだろう。なので投資家は経営者に対して①を encourage していくのが合理的と言える。
もちろん実体経済では①ができない企業はたくさんあり①ができなくても生き残れないということはない。しかし競合相手が親切にもuncompetitive になってくれることを前提に経営するのは賢いとは言えないだろう。

③自社株買い
3つ目が自社株買い。自社の株価が明らかに安いならこれは最も確実に金を儲ける方法だ。80centを$1と交換することと同じようなものだからだ。自社株買いというのは一般投資家よりもその会社の方が当然多くの情報を持っているので価値の評価能力があり株価が下がってくれば非常に有効な価値創造手段となる。自社株買いをすれば短期的に需給で株価が上がるためそれを狙ってやたら自社株買いする企業もあるが本質的価値よりも高い株価で自社株買いすると逆に即座に、確実に価値の毀損となる。従って自社株買いでは価格が最重要と言える。

④配当
4つ目で配当が出て来る。配当を払う理由は株主がキャッシュを求めているからだ。しかし株を一部売却することでもキャッシュは手に入る。ここではそっちの方が得な場合が多いとバフェットは言っている。
その理由としてリーズナブルなROEが出る企業であれば内部留保した方が価値が上がること、公開企業では時価バリュエーションはたいていオーバーバリューされていること(したがってたいてい本質的価値より高く売れる)、それから税金面でも配当は必ず課税されるのに対し持ち株一部売却の場合キャピタルゲインの場合のみ課税されるため有利(持ち株で利益が出ていても他の株でキャピタルロスがある場合などは課税所得が減るから)という点を挙げている。また株主の流動性需要の都合は人それぞれなので一部売却であれば需要に応じてどのくらい現金化するかを選択できるというメリットもある。従ってバフェットは配当をキャピタルアロケーションの最後の手段と言える。
また配当はある意味①から③をトライしたが有効な投資機会が探せなかった結果であるとも考えられキャピタルアロケーターのバフェットとしてはいわばギブアップしたようなものだ。この市場のどこかに経済的にmake sense する投資機会が必ず存在すると信じているならばバフェットは配当しない。今でなくても良く数年以内に現れることが合理的に期待できる場合でも配当しないことは合理的と言える。市場の暴落というのは定期的にくるためおそらく今後もずっと配当しないと思う。

以上4つのキャピタルアロケーションはこれ以前にもいろいろなところでバフェットは語っていることでバフェット投資哲学の大きな柱だ。このキャピタルアロケーションの意思決定に求められる重要なクオリティは「合理性」だ。①~④を選択するときに感情を排除して合理性だけで判断する。多くの企業は①~④のすべての段階で大きく間違える。これは「第14回1987年」の三つ目のトピックでも紹介している。このキャピタルアロケーションで長期的な価値創造に他社と大きく差が付くわけだ。

ハクゴ録「利益の使い道は十分なリターンを出す内部留保が第一

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