2022年08月13日

2022.6.11-2

世界最高の投資家から投資を学ぼう企画。1977年からのバフェットから「株主への手紙」を読破する。
バフェットを「読む」は毎年バークシャー・ハサウェイ社の年次報告書で発表されるバフェットの「株主への手紙」原文を読みその年の内容の中で最重要と思われる2,3点を抜き出して解説する。
バフェットは投資とビジネスの様々な局面でどう考え、どう動くのか?これを読み解いていけば巨人の肩に乗り投資家として今よりもずっと遠くが見えるようになるだろう。そしていつか自分の足で立ちバフェットの視座から世界が見えるようになることを目指す。
抜粋部分には書かれていないバックグラウンドなども紹介してより立体的にバフェットの考え方を理解できるように解説したい。
賢人の教えを学びより多くの人とここで理解をシェアしたいと思う。多くの人が投資家としてより良い判断ができるようになればビジネスは賢くなり、より豊かな社会につながるだろう。

目指すは賢明なる投資家!

2014年バークシャーの保有株は以下の通り。
銘柄MKT value
($mil)
割合
American Express Company14,10612.0%
The Coca-Cola Company16,88814.4%
DaVita HealthCare Partners Inc.1,4021.2%
Deere & Company .1,3651.2%
DIRECTV2,1341.8%
Goldman Sachs2,5322.2%
IBM12,34910.5%
Moody’s Corporation2,3642.0%
Munich Re4,0233.4%
The Procter & Gamble Company4,6834.0%
Sanofi2,0321.7%
U.S. Bancorp4,3553.7%
USG Corporation1,2141.0%
Wal-Mart Stores, Inc.5,8155.0%
Wells Fargo & Company26,50422.6%
Others15,70413.4%
Total117,470100.0%

それでは2014年の内容に入っていきたい。

今回はバークシャー50周年記念の年で "Berkshire - Past, Present and Future"と題してBerkshireの歴史振り返りがある。この年の手紙の紙面の半分はこのバークシャーの歴史に割かれている。

投資と経営はコインの両面
"...my experience in business helps me as an investor and that my investment experience has made me a better businessman."

"I therefore think it’s worthwhile for Todd Combs and Ted Weschler, our two investment managers, to each have oversight of at least one of our businesses."

「私の経営の経験が投資家としての経験に役立ち、また私の投資家としての経験が経営者としての自分に役立った。」
「二人の投資担当者であるトッドとテッドにはそれぞれ少なくとも一社の子会社を経営させてみるのが良いと考えている。」

【解説】
トッド (Todd Combs)とテッド (Ted Weschler) はバフェットの投資部門の後継者としてそれぞれ2011年, 2012年にバークシャーに入った。バフェットは全体のCEO後継者と投資部門の後継者を分けており投資部門後継者がこの二人となる。CEOは現Berkshire Hathaway Energyのトップの Greg Abelが後継すると考えられている。

バフェットは投資家であるが経営者でもある。経営と投資の二つの経験がお互いの資質を強め合っていることを知っている。企業を経営することで投資家だけでは見えなかった部分が見えて来る。投資をすることで企業経営者には見えない部分が見えてくる。この経験から投資部門の後継者であるトッドとテッドにも経営者としても経験をさせようというわけだ。経営と投資と言うのはビジネスというコインの両面のようなもので両方を理解することがビジネスでの判断能力を高める。

オーナー経営者というのはもともと投資家と経営者が一体となっているのでこれが一番オリジナルの形態だが会社はその成長の過程でオーナーと経営者を別々の人が担うようになっていく。投資家と経営者はどちらも個人であり、個人として稼ぐ仕組みが異なる。投資家は自分が投資した資本に対して利益が上がることで稼ぐ。経営者は給料とボーナスで稼ぐ。個人として稼ぐ仕組みが異なることから目的が変わり、行動が変わり、気持ちが変わっていく。これがどんどん離れていくといずれはエージェンシーコスト問題となってしまう。この稼ぐ仕組みの不一致が目的の不一致を生み、行動の不一致となる。行動が異なるため求められるスキルも異なる。お互いの理解が薄くなり気持ちが離れていきがちだ。離れるどころか対峙していることもよくあることだ。これを一致させるのがコーポレートガバナンスとなる。

しかし投資家も経営者も同じビジネスに関わっていてしかもビジネスの中で両者ともに重要な立場にいるのでお互いの目的・行動・スキル・気持ちを体験を通じて理解できればお互いの気持ちは一体となり理想的だ。バフェットはこの両方の立場を兼務していることから両者の気持ちを一緒にすることの重要性を理解している。バークシャーの将来を担うこの二人は経営者の経験が少ないためこの投資家と経営者の両方立場を理解させるべく子会社経営にあたらせるという事だ。総会では経営者を経験することで human natureをよりよく理解すれば投資家としてもより良い投資家になると言っていた。

株式投資はリスキーなのか?
"Investors, of course, can, by their own behavior, make stock ownership highly risky."

「投資家は自らの行動によって株式投資をリスキーなものにしてしまっている。」

【解説】
株式投資にリスクはある。投資先企業の企業価値が下がってしまったら株主は損する。それがリスクだ。しかし企業価値変化のリスク以上に投資家自身の行動が株式投資を必要以上にリスキーなものにしてしまっている部分がある。この理由は投資家は株価の動きをリスクだと勘違いしてしまうためだ。株価が大きく動く場合リスクが大きいと感じてしまう。これは株価を企業の価値と同じものだと考えてしまうことからくる。

長期では株価と価値は同じ方向に動いていくが短期では株価と価値は全く関係ない方向に動く。これが株式投資の最大のトリックだろう。短期の株価は評価損を生むため「損した」と思ってしまうわけだ。さらなる「損」の可能性が恐怖心を誘発し株価をリスクだと思ってしまうわけだ。そして市場がさらに暴落した時に評価損から逃れたくて売ってしまう。結果的に本当に損してしまうわけだ。この行動、つまり株価に心理を影響されてしまい行動することが株式投資をリスキーなものにしてしまっている。

短期の株価の動きというのは企業の価値の動きを全く反映していない。では何を反映しているのか?市場心理を反映しており短期では株価は企業価値とは全く関係なくどっちにも動き得る。株価に反応してしまう投資家は企業実態を見ていない。他人の心理の動きを見ているわけだ。
投資で成功するために何にフォーカスすべきかについて前回「第41回2013年」の二つ目のトピックでバフェットの言葉を紹介したが、

"Focus on what is important, and what is knowable."

短期の株価に影響されて行動してしまう人はこの両方で間違いを犯している。重要なこと、即ち企業業績にフォーカスせず知り得ないこと、即ち他人の心理の動きにフォーカスしている。この結果何が起こるかは明らかだろう。

株式投資はリスクはある。しかしそれを不必要にリスキーなものにしているのは投資家自身だ。これを避けれるようになることは簡単ではないが投資家として成長するために非常に重要なステップだと思う。

バフェットが20代~30代の頃の投資方法
"My cigar-butt strategy worked very well while I was managing small sums. Indeed, the many dozens of free puffs I obtained in the 1950s made that decade by far the best of my life for both relative and absolute investment performance."

「私のシケモク投資法はまだ私が運用している金額が少なかった時に非常に上手くいった。1950年代にこのシケモク投資で出したリターンはダントツで私の人生で最高の成績だった。」

【解説】
バフェットはコロンビア大学院で当時からウォール街でも有名だったスター教授のベンジャミン・グレアムの元で投資を学んだ。バフェットはとびきり優秀な学生であった。なんとグレアムが20年以上教鞭を取る経験の中で唯一 A+ を与えた生徒がバフェットだったらしい。大学院を卒業後、ベンジャミン・グレアムの投資会社で働かせてほしいと頼んだがそれはかなわなかった。グレアムはユダヤ系移民で当時ウォール街ではユダヤ人が働ける会社は限られていたためそのためにポジションを開けておきたかったという事情があったためだ。

バフェットは卒業後仕方なくオマハに戻り父の経営する証券会社でしばらく働いた。その後もグレアムとの交信は続き投資のアイディアを議論しあった。その後ついにグレアムはバフェットを雇うことにした。バフェットは数年間グレアムの元で働いたがその後グレアムは仕事から引退した。グレアムはその投資会社 Greham Newman 社の投資家たちに会社解散後の投資先としてバフェットを紹介した。この経緯でバフェットは早い時期に大きなカネを運用することになったのだ。1957年、バフェットは27歳だった。Grahamから教えてもらったいわゆるシケモク投資は上手くいきこの期間人生で最高のパフォーマンスだった。
ではどのくらいのパフォーマンスだったのだろう?
 
以下は1957年から1965年までつまりバークシャー・ハサウェイとして投資ビジネスする前のBuffett Partnership Ltd. ("BPL") のパフォーマンスだ。


DowBuffettAlpha
1957-8.4%10.4%18.8%
195838.5%40.9%2.4%
195920.0%25.9%5.9%
1960-6.2%22.8%29.0%
196122.4%45.9%23.5%
1962-7.6%13.9%21.5%
196320.6%38.7%18.1%
196418.7%27.8%9.1%
196514.2%47.2%33.0%

当時はDowをベンチマークとしていたがとんでもなくすごい成績だ。マーケットが下がっている年でも大きな絶対リターンを出している。バフェットはキャリアの初めからダイナマイトスタートを切っていたのだ。

駆け出しのころバフェットはいったいどんな投資をやっていたのだろうか?

当時バフェットは今のようないわゆるバリュー投資とはかなり性質の異なる投資をやっていた。1960年代の手紙を読むとバフェットはポートフォリオを次の3つのセグメントに分けていたと書いてある。

1. "Generals"
バランスシートを基にする定量的な手法でいわゆるシケモク投資。バランスシート(運転資本)の価値よりも大幅に低い株価で売られている銘柄を買いフェアバリューに戻った利食う。これを常時15-20銘柄、ポートフォリオの30%-60%くらい持っていた。すぐに利食える場合もあれば数年かかる場合もあったとのことだ。

2. "Workout"
これは今では "Acquisition arbitrage", "Risk arbitrage" と呼ばれる手法で企業が買収を発表する場合被買収企業の株価は買収価格まで上がらずそれより若干安い値段で取引される。破談のリスクを織り込んでいるためだ。この破談リスクが低いと判断した時に被買収企業の株を買収予定価格より安く買い、信用売りを同時に行うことで投資リターンを確定させる。投資期間は2,3カ月だ。こんなことやっていたのかと驚きだ。2.はなんと2番目に大きかったセグメントだと。

3. "Control"
これは経営権を握るパターン。通常1.のGeneralで買ったものをやっぱり良い企業だったと判断した場合に買い増しして経営権を握っていった。そしてその後経営に介入していく。祖業バークシャー・ハサウェイ社もこの方法だ。このタイプが利益確定(すなわち資本回収)には一番時間がかかる。この資本回収期間というのをバフェットは特に気にしていた。企業を merchandize のように扱っていたため買っては売り買っては売りの繰り返しをしていたためいかに早く資本を回収するかが重要だったためだ。

ここで一点面白いと思ったのはいったん3.になった株はその投資価値を評価するのに市場の株価を使わず(100%保有ではないため一部公開市場で売買されていたため株価があった)バフェットが自分でバリュエーションをしていたことだ。これはコントロールを握っているので企業の経済実態を見てバリュエーションするしか意味がないからだ。株価が市場でいくらをつけようが無視できる状態にある。なぜなら株価をつけている少数株主にバフェットの持ち分を市場の時価で売ることは出来ないからだ。この時株価は意味をなさなくなる。これはオーナー経営と同じ状態でこの経験は株価に意味がないということを理解する最も適切な手段ではないかと思う。

当時のバフェットの投資管理方法の難点はもの凄く労力がかかることだった。バーゲンを探しては買って値上がりしたら売り、それをひたすら繰り返していた。まるで在庫を回転するように。回転ビジネスだったため上手くいくととんでもない投資リターンが稼げる。バフェットは20代から30代にかけてこの方法で高いリターンを上げたのだ。

ハクゴ録「バフェット実は駆け出しからいきなりダイナマイトスタート

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