企業分析、銘柄選択

2024年03月12日

2024.3.11

コストコの株価
米国株式全体のバリュエーションが最近上がってきている。

現時点でのS&P500指数 5,114だとPERは28倍程度となる。

個別株でも割高な銘柄が目立つようになってきた。

その中でコストコ(ティッカー COST)について株価が高いかどうかを判定する分析をしてみたい。
コストコはハクゴは保有していないがグレートビジネスとしてウォッチしている銘柄の一つだ。

以下の前提でコストコ株を10年間保有し10年後に売ったと仮定してその投資収益率を推定してみる。

前提
EPS $14.16
利益成長率 14% (過去実績値は過去5年平均18.6%, 過去10年平均13.2%)
10年後のPER を25倍と仮定。
配当は直近$4.08 で一定

上の前提で本日の株価$715で投資し、10年間コストコに投資した場合の投資収益率は +6.6%となる。
これは低い。。

何と比べて低いと言うのかというのが大切で長期国債だ。現在10年の長期国債利回りは4.1%である。
これはリスクを全くとらずに4.1%のリターンが得られることを意味している。
これに対しコストコというビジネスのリスクを取って6.6% のリターンが期待されるということだ。

株は国債よりもリスクが高いので債券の利回りよりもかなり期待リターンが高くないといけない。6.6%だと4.1%より高いからOKとはいかない。6.6%は保証されたものではなくリスクがあるので バッファーが必要なのだ。バッファーはリスクによるが低くても5%とかは必要だと思う。

コストコへの投資の期待リターンが低すぎるというのはどういうことだろうか?

株価が高過ぎるということだ。

株価が高過ぎる( 期待収益率が低すぎる )のになぜ株価は過去上がり続けてきたのだろうか?
株を買っている人は高過ぎるのになぜ買っているのだろうか?何を期待しているのだろうか?次にその可能性を3つ挙げたい。

株価高いのになぜ投資家は買い続けるのか?

可能性1. 実は今の株価は高過ぎない
これはあり得るが長期金利4.1%に対して5%はバッファーが欲しいとしよう。そうすると期待収益率は9.1%必要となる。これを実現するために逆算すると利益成長率が16.8%達成する必要がある。上で述べたように過去5年間は実際18.6%成長したので不可能ではないがこれは非常に高い水準だ。果たして達成できるだろうか?過去10年実績では13.2%であることを考えると今後10年16.8%という数字は現実的だろうか。コストコは既に大きな規模となっており規模が大きくなるほど達成は難しくなるということを勘案し成長率を評価しないといけないだろう。

可能性2.長期金利が十分下がる
長期金利が下がり5%のバッファーを考えると長期金利は1.6%まで下がる必要がある。この可能性はゼロではないが低いだろう。

可能性3.株価が上がり続ける
長期金利に対してリスクに見合ったリターンが得られていないがそれでも買いたいと言う人が新たにそして長期的に現れ続ける。高過ぎる株価を維持するためには高い株価で買った人が今存在するだけでは不十分で株の買い手が将来にわたり新しく現れ続ける必要がある。具体的には「長期金利は4.1%に対しコストコへ投資すると長期で6.6%のリターンしか期待できない。それでも買いたい」と考える人が将来にわたり現れ続ける。
コストコの事業にはリスクがあるため前提となる売上成長を達成できない年も必ず出てくるだろう。そうなると利益も落ち投資リターンは長期金利を下回る年が出てくる可能性は十分ある。それでも 将来にわたり株の買い手が新しく現れ続けなければ3.の前提は成り立たなくなる。
この前提で買っているとしたらはまさにバブルだ。

結論としては1.と2.の可能性が低いとするとコストコの株価はバブっている可能性が高いとハクゴは考えている。
いつかはわからないがいずれは大きな調整局面が来ると考えられる。

ハクゴ録「高過ぎる株価はずっとは続かない

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(05:15)

2024年02月01日

2019 May 17

アルファベットQ4決算
本日アルファベット(GOOGL)決算発表があり株価が7.5%下がった。

グーグルはハクゴの主要保有銘柄の一つであり毎回決算をチェックしている。

結論から言うとグーグルの本質的な競争力については不確定なところはあるが、それは昔からあったもので今回の決算でなにか変わったというものではない。今回の決算はハクゴが期待している結果を上回る内容なので全く問題ないというのが結論。

株価が下がるのは発表以前の市場の期待が高すぎたせいであり、株の価値の源泉であるその企業の競争優位性とは無関係だ。

ハクゴは自分が期待した長期の利益成長を今後も達成していけそうであればOKと考えている。

今回発表は2023年度売上成長が8.6%で予想に届かなかったため株価が落ちているがハクゴが見るポイントは過去5年の売上・利益成長を見たうえで今後長期にわたり自分の期待している利益成長を達成できそうであれば問題なし、と考えている。

2023年売上成長は過去比減速しているが売上推移に凸凹があるのは問題ではなく、あくまで長期にわたり自分の期待する成長率を維持できるか?ということを考えている

このように5年とかの中・長期で考えると直近売上が減速していることは発表前からわかっていることで株価は反応し下がっているが 今回の決算で何かが変わったわけでは全くない。バリュエーション的にもフェアで、むしろさらに下がった場合には追加投資も考えたい。

グーグルの競争優位性
企業の競争優位性が維持・拡大されているか?投資を決める上でこれこそが最も重要な問いだ。

この問いに対し Yesと答えられれば「保有」で間違いない。株価はその判断の要素ではないのだ。

グーグルについてはAIの競争に勝っていけるか?ということになる。
この疑問はグーグル始まって以来ずっと不確かな質問で明確な答えはない。

ハクゴが考えているグーグルの競争優位性は大きく以下の2点。

1)アルゴリズムを改良し続ける技術者チームを引っ張るチームの力
2)億人単位のユーザーの常時使用に耐えられる計算能力

1)アルゴリズム自体はコピー可能だ。しかしAIが目指すものは人間のような「判断力」であり人間がどのような仕組みで判断をしているかはわからない。そのため人間が判断したかのような判断を機械にさせるアルゴリズムを作る過程に終わりはない。「マスターアルゴリズム」などとも呼ばれるがこれは想像上のもので永遠に続く改良のプロセスに競争優位性がある
グーグルにそれがあるかどうか?これが重要な問いとなるがハクゴにはそれはわからない。わからずに判断するためには今までの実績、トップの哲学等から推測せざるを得ない。今のところ実績を上げており生成AIで出遅れ感があるもののアルゴリズムの改良力が劣っているということでは全くないと考えているため競争優位性が変化したとは考えていない。

2)グーグルはこの計算能力を維持するために多額の設備投資をしている。これに競合が対抗することは簡単ではない。

以下はグーグルの過去10年の利益と設備投資の比較だ。利益の多くを設備投資に回していることがわかるがこの多くは計算能力の増強に使われている。



アルゴリズムで優位性を持つ競合が現れても億人単位のユーザーが常時使用に耐えられるハードウェアがなければユーザーにサービスは届かない。しかしオープンAIのようにん優れたアルゴリズムを作れる能力を証明すれば一気に資本が集まるためこの資本の優位性は長期では維持できない。だからこそ競合の出現を短期で抑え込む必要がありここは手遅れにならないうちに競合をたたいておく必要があると思う。

このあたりがグーグルが長期にわたって競争優位性を維持できるかのカギだと考えている。

ハクゴ録「長期の競争優位性をチェック」

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(05:48)

2023年10月14日

2022.2.27

2022年に引退したCEOが戻ってきた
ダラー・ジェネラルは2022年にCEOが Todd Vasos氏から Jeff Owen氏に代わった。新しいJeff Owen氏はCEO就任してまだ一年も経っていないのだがその後株価は以下のように大暴落中。

2023.10.13

ダラー・ジェネラルはこのブログでも過去何度も取り上げている銘柄だ(下のタグで"DG"をクリックすると過去記事が出てくるのでご参照)。

そのダラー・ジェネラルで本日CEOがもとのVasos氏に交代するというニュースが流れた。

Todd Vasos氏は2022年まで7年間CEOをやっており2022年にCEOを引退しJeff Owen氏に引き継いだ。その後もVasosは取締役としてDGビジネスにかかわっていた。Jeff OwenにCEOを交代後、ビジネスは様々な問題が出てきて株価はグングン半値以下に。これに対応して元のCEO Vasos氏がCEOに戻った形。

Vasos氏の経営力は確か。しかし後継者が育っていない
Vasos氏がCEOを務めた2015年から2022年の間売上、営業利益共80%増、株価は3倍以上になった。

Vasos氏に代わることでオペレーション上の問題が解決される可能性は高まったと思う。
株価はそれに反応して本日大きく上げている。

しかし、後継者を育成できなかったというVasos氏の問題は残ったままでVasos氏は今後オペレーション上の問題を解決するのみならず後継者育成に全力を注がないといけない。

Vasos氏の経営力はすでに証明されている。しかし、その能力を組織知として後継者に引き継ぐことはできていない可能性が高い。(実際にOwen氏の手腕がダメなのかあるいは取締役会が暴落する株価に影響されてのことなのかはわからない)
この後継者育成能力は経営力とは全く別物でこれができないと企業は永続しない。したがってここがダラー・ジェネラルの今後の最も重要な課題といえる。

ダラー・ジェネラルのバリュエーションはひじょーに魅力的でハクゴは今日さらにダラー・ジェネラルを買い増した。

ハクゴ録「経営力と後継者育成は別の能力で簡単ではない

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(04:46)

2023年10月05日

2022.2.8

年初来ずっと下がっているダラー・ジェネラル
過去何度か紹介しているダラー・ジェネラル(ティッカーDG)だが本日また今までより多く追加で購入した。

ダラー・ジェネラルの内容については「ダラー・ジェネラルを分析」「ダラー・ジェネラルまた追加購入」などをご参照。

株価というものは上にも下にも行き過ぎるもの。行き過ぎた時だけ取引をするのが理想的だ。DGについては今そういう状態にあるとハクゴは見ている。

ハクゴ録「稀にみるチャンスか」

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(06:26)

2023年09月29日

2019 Apr 15-2

多くの優良バリュー株は今高過ぎる
過去3年間米国債長期金利はボトムの0.5%から現在4.7%まで上昇を続けている。金利はキャッシュフローを生むすべての資産の価値にネガティブに影響する。このような金利環境下では株のバリュエーションは下がってしかるべきだ。しかし一部の優良なバリュー株の株価は長期金利の動きに合わせて下がっておらずハクゴには非常に割高に見える。

例えば有名なバリュー銘柄のP&GなどはPERが現在25倍と高い水準だ。
現在の長期金利水準(10年債)利回りレベルを考えるとこれら銘柄の株価は高過ぎると思うが今回はPG を例にとってなぜ株価が高過ぎるかを分析してみたい。
次の方法でP&Gへの投資の割高度合いを検証したい。

P&Gが今割高かどうか分析する
P&Gに今日の株価 $147.50 で投資し10年後に売却すると想定。
その売却益と10年分の配当金の合計と当初投資額(今日の株価)から10年間の投資収益率を計算し、それを現在の国債利回り4.7%と比較する。
株式投資の投資収益率は国債利回りを十分上回るか?

国債への投資と比較する理由は投資家は常にリスクの最も低い投資対象である国債への投資という選択肢を持っており、何もリスクを取らなくても今であれば毎年4.7%の利益を受け取ることができるためこれを超えられないというのは問題だ。
超えられてしかるべきなのでではどの程度超えられるのか?これが安全域 (Margin of Safety)という概念となる。この安全域が少ないと堅実な投資とは言えない。過度に高い値段で買っているかあるいはリスクが高すぎるかのどちらかだ。

今日の株価で投資し10年後に売却する前提は以下の通り。

前提

現在株価147.5
現PER25
EPS5.9実績値
一株利益成長率6.9%市場コンセンサス
配当性向64%直近実績

売却することを勘案すると将来いくらで売れるのか?という不確かな要素がある。これは将来のPERを予測することになりわからないが過去10年間の平均をとってみる。


PER
201317.7
201418.9
201521.3
201620.4
201722.1
201819.6
201921.0
202021.7
202123.4
202225.4
平均21.2

21.2xという数字になりこれを使いたい。

次の手順で考えていく。

投資CF一株利益配当PER
0-147.505.90
25.0
1
6.314.04
2
6.744.32
3
7.214.61
4
7.704.93
5
8.245.27
6
8.805.64
7
9.416.02
8
10.066.44
9
10.766.88
10243.7611.507.3621.2
合計
55.51





株式売却
243.76
配当累計
55.51
10年目に受け取れる合計額299.27





10年間のリターン(年平均)7.30%





10年米国債利回り
4.70%






MoS
2.60%

  1. まず10年後のEPSは直近EPSと利益成長率によって計算できる。
  2. 10年後のEPSと10年後のPERで10年後の株価が計算できる。
  3. 今後10年間のEPSと配当性向により今後10年間に受け取れる配当金が計算できる。10年後の売却益と配当金額と当初投資額で投資収益率を計算できる。
  • 実際に上の表のように数値を入れてみると、10年後の株式売却額 ($243.76)と10年分の配当($55.51)を合計すると $299.27. 今日の株価 $147.5 が10年後に$299.27になるので10年間の平均の投資収益率は 7.3%となる
これは現在の10年国債利回り4.7%を わずか2.6%しか上回っていない。P&Gはリスクは割と低いビジネスだがこれは安全域としては少なすぎる。何かビジネスの状況が変わった場合2.6%しか余裕がなく、もしかしたら国債利回りを下回ってしまうかもしれない。
ここは投資家のリスク志向次第だが5%は欲しいところだ。現在の株価が高すぎると言えるだろう。

この状況でP&G株を買う場合そのような投資家は何を狙っているのか? 

1)P&Gの利益が予想を超えて速いスピードで成長する、あるいは
2)10年後に過去平均PERよりも高い値で売れると踏んでいるかのどちらかだ。

もう一つの可能性として長期金利が大幅に下がるということを狙って買っているということも考えられるがそうであれば国債を買えばよいのではないだろうか?

1)の可能性については、上の前提で逆算してみるとP&Gへの投資が国債投資に対し5%の安全域を生むためには利益成長は当初前提の6.9%ではなく9.4%であることが必要となる。これは過去10年の一株利益成長率平均が3.9%しかないことを考えると全く非現実的な数字で、今この株価でP&Gを買っている投資家は2)の10年後に高値で売れると踏んでいる投資家となる。

では10年後PERがいくらで売れると5%の安全域を確保できるのか?これを逆算すると10年後にPER 27.5倍で売れることが必要となる。これは不可能ではないがこの賭けはかなり勝率が低いだろう。

こう考えるとP&G の株は現在非常に割高な価格で売られていることがわかる。今この銘柄を買うのは投機的であり投機家がいつ引くかはわからない。長期ではこのような割高な株価は持続しない可能性が高い。

このような割高な株価は程度の差こそあれいくつものバリュー株銘柄で今共通に見られる現象だ。

一部の優良バリュー銘柄は実際下がり始めている。例えばハクゴのモニター銘柄のハーシーズ(HSY)などは高値から大きく下がっており逆にいつか買いのチャンスが来るかもしれない。

ハクゴ録「多くのバリュー銘柄は今高過ぎる

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(05:51)

2023年09月07日

2022.2.8

ダラー・ジェネラルQ2業績発表で株大幅安
ダラー・ジェネラル(ティッカー DG)は小売店ビジネスでハクゴのトップ10保有銘柄に入っている。
今次Q2の業績発表があり株価は大きく下げている。過去一年の高値から約半値となっている。

株価が大幅に下がっている理由
- 既存店売上がYoYで0.1%の減少となり EPSは年間で34%下がるとの見通しとなったため。
- 店舗従業員とサプライチェーンからくる在庫の問題で顧客満足度が下がり来店数が減ったと分析している。それに対しCEOは労働時間と在庫にすでに投資し手を打っているとのこと。打ち手の結果は出始めているといっているが今後客足が戻るかどうかがカギ。

つまりQ2業績は悪かったが一時的な不振かどうかが判断のカギとなる。

DGの売上は既存店舗売り上げの伸びと新規開設店舗の売上の伸びに分解される。
今Qの全体売上の伸びが +3.9%のうち既存店舗の売上成長がマイナス0.1%となった。
この全体売上+3.9%というのはどのくらいマズイ数字なのかを見てみたい。

過去2年間の四半期売上成長率 YoYの推移を競合他社との比較で示してみた。黄色がDGだ。直近Qの+3.9%が確認できる。


3四半期前の売り上げの伸び(+17.9%)が非常に高かったせいもありそれに続く四半期は弱い。特に直競合のダラーツリー(DLTR)の売上成長率が加速しているのに対しDGは原則しているのはよくない。

一方少し長期(3年間)で売上のトレンドを見てみる。3年前(12四半期)の売上を100としてインデックス化してみると下のようにTGT以外は大体同じくらいの成長をしているのがわかる。


一番直近2四半期の動きは確かに各社バラバラだが3年の長いスパンで見てみると売上の動きはTGTだけ除きWMT, DLTR, DGの3社はほぼ三つ巴だ。

もちろんDGだけ実は現場混乱がまだ解決できていないという可能性はある。しかしこれまでの事実だけを見ると競争力が落ちた結果として売上成長が他社比劣後したようには見えない

バリュエーションの観点からは現在の株価でDGを10年保有した場合、年平均リターンは12%以上あるとハクゴは計算しており本日買い増しを実行した。

DGはハクゴのトップ保有株の一社だ。だからと言って決してバイアスのかかった見方をしてはならない。

常に「今日ゼロから始めると仮定してこの株を今買いたいか?」という考え方で重要な事実と誰でも理解できる簡単な論理に基づいて判断するべきだ。

ハクゴ録「投資家は常に楽観主義者と悲観主義者の両者から距離をおく現実主義者であるべき

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(00:02)